ご挨拶

 長らく外務省に勤務し、2015年8月までの2年間は、経済関係を中心に日本との関係が緊密な上海で日本国総領事をしていました。上海を含め、海外では中国、米国、豪州、国連に勤務し、そして、時には世界の果てまで出張もしました。日本では外務本省や国会、総理官邸といった外交と内政の接点において、主としてアジア太平洋地域への外交政策を担当しました。東大からの要請を受け、2015年9月に東京大学大学院法学政治学研究科に移りました。一年目の最初の学期は、「現代外交実践講座」と題する演習を担当しました。法学部3,4年生と大学院生合せて30人強の学生が参加してくれました。このタイトルから想像される通り、外交ゲームや危機管理シミュレーションなども取り入れながら、「critical」な思考、「active」な討論、「creative」な論文執筆を重視する授業を行いました。2016年春からは、「国益」と外交を包括的に取り上げ、「critical thinking」の視点から様々な外交問題を掘り下げる大教室講義(英語)も担当しています。まだまだ、「言うは易く、行うは難し」で、試行錯誤の日々が続いています。中国の「大復興」によってパワー・バランスが変化するアジア太平洋地域の平和と繁栄をいかに確保するのか、日本の戦略や政策はどうあるべきか、パワーは十分か、外交の現場で考え、行動したことを踏まえながら、学問的に理論化・体系化していく努力が求められていると思います。外交実務家と学者理論家との違いの一つは、前者が情報や時間に制約がある中で決断し行動しなければならないのに対し、後者は納得の行くまで徹底的に真理を追求できることであると考えていました。しかし、そんな考えは東大に来てすぐに打ち砕かれました。社会的人間としての営みを維持しつつ、研究し、発信し、そして質の高い授業をするには一日24時間は余りに短く、実務家の時とはまた違った精神状況の中での時間不足を感じています。「時、未だ我が掌中にあらず」というのが偽らざる実感です。国際問題の現場には誰もが賛同する答えはありません。理論研究と実務経験の双方に立脚しながら、「reasonable」、「workable」、「sustainable」な解決策をいかに見出していくか、という目標に向けて忍耐強く前進して行く決意です。試行錯誤が続くでしょうが、毎日学問ができるという喜びがその決意を支えてくれるものと確信しています。私の好きな言葉に、「人間万事塞翁失馬」という中国の言葉があります。私の研究室の壁にも、中国の書道の達人が書いてくれたこの言葉がかかっています。毎日、この書画を眺めつつ、一つの事象に一喜一憂せず、淡々と、涼しげに、でも前向きに歩んで行ければいいなと思っています。学生の皆様、小原塾の皆様、そして拙著を読んで下さった読者の皆様、よろしくお願いします。

2016年4月  小原雅博

最近の活動等

2016年 4月25日、本ホームページを立ち上げました。

     5月28日~30日 上海フォーラムに出席し、報告しました。
          31日 復旦大学で講演しました。復旦大学より客員教授の称号を頂きました。

    9月末 豪州国立大学とのワークショップに出席し、報告しました。
    11月  韓国でのフォーラムと中国でのシンポジウムに出席し、報告しました。
        アメリカ大統領選挙後にカリフォルニアを訪れ、UCサンディエゴで意見交換しました。
    12月  世界の五大学が参加するワークショップに出席し、報告しました。
2017年 1月9日 「The Japan Times」に寄稿しました。
      27日 「The Japan Times」に寄稿しました。
      28日 東大の政治系研究会で「外交三原則と国益」について報告しました。